会員の海外登山活動記録 2010秋、Tharpu Chuli (5,663m), Rakshi Peak (5,200m)
     ・・・・・ Annapurna内院・・・・・ 
                           南井英弘

          

 カトマンズに入った翌日早朝にポカラ(820m)に飛んだ。大雨の為、道路が寸断されており、前日早朝に小型バスで出発し先回りしていたシェルパたちとポカラ空港で合流、車で2時間、登山出発点になるナイプール(1,000m弱)着。
大雨の中、早速キャラバンを開始し、2時間15分でSyaule Bazar(1,070m)村着、タンボの中に立つホテル(と言っても部屋数は6部屋のみ、その後アンナプナ・トレッキング街道では殆んどのホテルが6室だった、規制があるらしい)、ダルバートと呼ばれる典型的なネパール式定食の夕食を摂る。・・・その後も毎日ダルバート、美味しいですよ。

2日目も終日大雨、8時間半歩いてChhomorong(2,170m)到着、6室建てのロッジ泊

3日目、曇り時々晴、7時間半歩いてDovan(2,505m)着、6室建てのロッジ泊     アンナプルナの山々が首が痛くなるほど上に見え始めた。凄い迫力だ。

4日目、晴れのち大雨、3時間半でDeurali(3,239m)着、ロッジに入った後大雨と雷鳴。

5日目、晴後濃霧、夕方から大雨。

4時間半でMachhapuchhre Base Camp(MBC,3,700m)経由
      Annnapurna Base Camp (ABC4,130m)着、ロッジ泊

6日目、終日休養、周辺の散歩など。内院の壁(ヒウンチュリ、アンナプルナ南峯群、ファング、アンナプルナ主峰と主峰群、ロック・ノアル、ガンガプルナ、アンナプルナV峰、ガンダルバ・チュリ、マチャプチャレイ)がABCを取り巻き、そのど真ん中に目的のタルプ・チュリが大きな山容を見せている。

7日目、晴、後ガス。一旦、南アンナプルナ氷河右岸モレーンの急ながら場を下り、大きな岩や石で覆われた南アンナプルナ氷河を数百m右斜め上流に遡行。左岸のモレーンが侵食され岩石が剥き出しになっているがら場を120m程直登して左岸上に出る。数本ある急峻なゴルジュ帯の一番大きな上部をへつって長い草原状の登りを続け、氷河舌端部近くにAC(4,200)テントを設営。

8日目、高所順応と休養・・・・シェルパはルート偵察とルート工作
・・・今秋はこの山域に一隊も入っていないようだ。

9日目、午前240分、ヘッドライトを点けて出発、4時半、ラクシ・ピーク直下着。アイゼンを着用して氷河を渡る、途中で夜が白んできた。Tharpu Chuliの肩から連なる稜線への蒼氷の壁は傾斜が50度とも60度とも言われているが急斜面ながらシェルパの設置したフィックス・ロープをユマールとバイルを使い1ピッチが50m、4ピッチ。丁度200mだった。この青氷に取りついた直後、左足首に激痛が走った。足裏を全面フラットに斜面に置いても、内アイゼンの歯だけ突いて立とうとしても激痛が走った。試行錯誤の後、幸い足首を曲げずに伸ばし、前爪の2本だけを蒼氷の斜面に蹴りこめば何とか登ることが出来た。こんな状態で冷汗ものながら稜線に出た。左足は前ツァッケ2本だけで200m程登りきったのだ。Tharpu Chuli頂上(5,663m)まで残りは100m程だ。未だ、朝の7時15分だ!
 サーダー達は30分〜1時間あればゆっくり登れる。少し休んでいる間にルート工作をするので登ろうと盛んに勧めてくれた。時間は十分あったので1時間、足を休め或いは靴を脱いで足首のマッサージをするなど回復に努めたが、完全な回復には至らず、痛みが悪化した場合、シェルパに確保してもらって下れるような生易しい蒼氷の急斜面ではない。自力で降りるしかない。8時半、そんなことで主目的のTharpu Chuli頂上を目前に登頂を断念した。


   Tharpu Chuli (TENTPEAK)
 アンナプルナ内院の中にコブのように突っ立っているピークだ。辿り着いた稜線上の肩から遠くはアンナプナUW峰、目前の周辺は内院を取り囲むマチャプチャレイ、ガンダルバ・チュリ、アンナプナV、ガンガプルナ、グレーシャー・ドーム、ロック・ノアル、アンナプルナ主峰(8,091m)と主峰山群、ファング、アンナプルナ南峰と中央峰や北峰、ヒウンチュリなどが、ドカッと顔を見せ足元まで含めて全身を見せてくれた。どの峰も足元・スカート部分は懸垂氷河が大小クレバスを露呈し凄い景観を呈している。この景色を独り占めするのは本当に勿体なかった。(目前にあるタルプ・チュリの山陰にはモディ・コーラからポカラに流れる谷間だけ。幸い見えない山は一つもない)青氷の壁は50mのフィックスを使い、8環を使って4回の懸垂下降。左足は前のツアッケ2本だけで、左足首を庇いながらも気持ち良く下りきった。 下山路で僅かデビエーションして第2目標のRakushi Peak (5,200m)には登った。
 AC手前100m程でアイゼンを外し、12時過ぎにACに帰着。

10日目、ACから5時間半かけてMBC着、ロッジ泊。・・・下山途中、ガレ場の数箇所でシェルパにビレーしてもらい安全を期して下った。

11日目、MBCから9時間歩きに歩いてSinuwa(2,340m)着、ロッジ泊。

12日目、ドンドン歩くこと11時間40分でSyaule Bazar到着、ロッジ泊。

13日目、2時間半で振り出しのNayapoolに帰着、車でPokharaに出てロッジ泊。

予定をかなり短縮した行程になった理由:

1.高所の影響を受けなかった。猛暑の中、毎日の訓練歩行、恒例の富士山宿泊登山の実施と出発3〜4日前に「三浦BC」で夕方から3時間低酸素室でペダル漕ぎやトレッドミルでの歩行、引き続き夜は低酸素室(5,000m相当に調整)での睡眠、翌朝3時間のトレッドミルでの歩行といった高所順応訓練も役立ったことだろう。

2.朝の「血圧、 SPO2検査」結果に異常が無く、お蔭様で体調が良かったので自然と一日の行程が伸び、日程が短縮した。

 3.登りも下りも、ゆっくりながら歩き出したら昼食以外は休憩を取らずに     歩き続けた。

反省点:
   1.登降共にあと2日ほどかけて、ゆっくりと景観を楽しみ草花や動物・鳥類を    観察すべきだったと、

2.そんな事で登山予備日の1週間を含め、2週間を下山後ポカラやカトマンズ過ごすことになった。

 ポカラで5日泊、カトマンズで7日泊、時間はあるが下山した後はトレッキングにさえ出かける気にならず、毎日のように下山してくる登山隊隊員たちと情報交換したり、本屋に通った。

 お蔭様で来年用の魅力有るピークを見つけた。

 

PSポカラのヘワ湖近くの公園から嬉しいことに毎日のように左端にダウラギリの  巨体が、正面に上空に突っ立つように左から南アンナプルナ、ヒウンチュリ、  アンナプルナ本峰山群、マチャプチャレイ、アンナプルナW峰、U峰、ラムジ  ュン山群が見え、その右にマナスル、P29、ヒマルチュリが見えていた。

  以上、時差ぼけの報告で失礼します。       
     

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写真集



       1.ABCから見たタルプ・チュリ(5,663m)


       2.アタック・キャンプ(背景はアンナプルナ南峰)


        3.ACから見たタルプ・チュリ


       4.氷河越に見える稜線と氷の壁上部


       5.氷河越に見える稜線と氷の壁


       6.壁への取付き下部・シュルンド部


       7.登ってきた壁をふりかえる(稜線上から)


       8.稜線上、目前のタルプ・チュリ頂上


       9.黒いタルプ・チェリの右にヒウンチェリとアンナプルナ南峰


       10. アンナプルナ南峰と南峰の北峰


       11.フアング(岩峰)とアンナプルナT峰(8091m)


       12・登って来た壁の上、稜線上の三角の山(Singu Chuli)と
           左にロック・ノアルと右にグレーシャー・ドーム



       13・中央がガンガプルナ、右アンナプルナV峰


       14・タルプ・チェリの左肩にマチャプチャレ


       15・アンナプルナU峰(奥)とW峰(手前)・・・望遠使用


       16.ガンガプルナ・・・望遠使用


        17.アンナプルナT峰(中央奥)と南壁・・・望遠使用


       18.フアングの岩峰・・・望遠使用


       19. タルプ・チェリの肩にて、サーダーのアンプリ・ラマと共に


    20.下山方向、ラクシ・ピークを見下ろす。上から見るとピークと言うより
        コブの様だ 


     ポカラから望む巨峰群

     21.ロッジの目前に聳えるマチャプチャレ

     22.マチャプチャレとアンナプルナV峰

     23.ヘワ湖畔よりダウラギリ

      24.アンナプルナ南峰と右にアンナプルナT峰(手前の三角の山の左奥に)

      25・ヘワ湖畔からアンナプルナ南峰とマチャプチャレ

      26.左W峰と右U峰

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